不動産相続は、すべてのケースでスムーズに相続まで進むとは限りません。 相続人同士の考え方の違いなどにより、トラブルに発展することもあります。 また、不動産相続でトラブルが発生することは、さまざまなデメリットにつながります。ここからは、具体的にどのようなデメリットがあるのかについて解説したいと思います。
不動産相続でトラブルが発生することのデメリット5選
不動産相続の途中でトラブルが発生すると、以下のようなデメリットにつながることがあります。 ・控除や特例が受けられない ・空き家の放置につながる可能性がある ・後順位の相続人に迷惑がかかることがある ・弁護士への依頼費用がかかる ・共有分割をしなければいけないことがある
控除や特例が受けられない
不動産相続でトラブルが発生すると、相続人同士の意見がまとまらず、遺産分割協議書が作成できません。 また、遺産分割協議書がなければ、土地や建物の名義を変更することができないため、売却も不可能になります。 もっと言えば、小規模宅地の評価減や、特定事業用資産の特例なども受けられなくなります。 つまり、相続人が負担する税金などが増加し、損をするということです。
空き家の放置につながる可能性がある
不動産相続でトラブルが発生すると、相続の対象である不動産が正しく処理されず、維持管理も売却もされない空き家になってしまう可能性があります。 また、空き家の状態のまま放置すると、建物は劣化しやすくなるため、今後売却するのも難しくなりますし、景観の問題や衛生面などにおいて、周辺住民に迷惑をかけることにもつながります。 場合によっては、不良や浮浪者などが棲みついてしまったり、放火のターゲットになり、周辺の住宅が延焼に巻き込まれてしまったりすることも考えられます。 このような状況は、また別のトラブルを生み出すことも考えられるため、不動産相続のトラブルは必ず解決し、相続物件の適切な維持管理や売却を行わなければいけません。
後順位の相続人に迷惑がかかることがある
例えば、不動産相続でトラブルが発生したことにより、先順位の相続人全員が相続放棄をしたとします。 先順位の相続人全員が相続放棄をした場合には、後順位の相続人へ相続権がうつります。 具体的には、亡くなった被相続人の子、被相続人の直系尊属、被相続人の兄弟姉妹という順番です。 しかし、不動産相続のトラブルが原因で、後順位の相続人に相続権がうつることで、そちらの相続人に対し、相続債権者による借金の請求が行われるかもしれません。 相続放棄は、不動産や預貯金などプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も放棄することになるため、いきなり借金を背負わされた後順位の相続人と先順位の相続人は、関係が悪化してしまう可能性があります。
弁護士への依頼費用がかかる
不動産相続でトラブルが発生した場合、相続人だけで問題を解決するのは難しい場合があります。 このようなケースでは、弁護士に依頼をするのが一般的ですが、もちろんこちらの依頼には費用がかかります。 相談料に関しては、初回無料で行っている法律事務所も多いですが、問題なのは着手金と報酬金です。 こちらは、実際に弁護士が案件の解決に動き出すタイミングで支払う費用です。 金額は相談内容などによって変化しますが、相場は20~200万円以上と差があります。 また、報酬金は、相続トラブルの解決後に発生する費用のことであり、交渉や調停、裁判などで獲得した経済的利益の額に対し、数%という形で金額が決まります。 つまり、問題が解決しなければ発生しないということですが、こちらの金額も数百万円単位になることがあり、そもそも金銭的な余裕がなければ、不動産相続のトラブルについて弁護士に依頼するのは難しいです。
共有分割をしなければいけないことがある
不動産相続でトラブルが起こり、相続人同士の意見がまとまらない場合、分割方法もなかなか決定しません。 不動産の分割方法には、主に現物分割、代償分割、換価分割の3種類がありますが、いずれも実行できない場合は、一旦相続人全員が不動産の所有者となる共有分割が行われます。 しかし、共有分割にはさまざまなデメリットがあります。 まず、共有分割をした不動産の売却や建て替えを行う際は、共有者である相続人全員から同意を得なければいけません。 共有者に子どもや孫ができると権利関係が複雑化し、不動産の取扱いにおいて、一層の注意が必要になる可能性もあります。 また、共有分割の場合、共有者の要件によっては、小規模宅地の特例などの税制遊具措置を受けることができません。
まとめ
ここまで、不動産相続でトラブルが発生することの主なデメリットを見てきましたが、いかがでしたでしょうか? 不動産相続のトラブルは、相続人だけでなく、さらに後順位の相続人や、相続物件の周辺住民など、さまざまな範囲に悪い影響を与えます。 そのため、被相続人の生前から、相続人同士の関係を良好にしておくことや、被相続人目線でいうと、適切な内容の遺言書を用意することは重要です。