換価分割は、相続した不動産を現金に換えて相続する方法です。 これにより、そのままでは分けにくい不動産を均等に相続でき、なおかつ相続税の支払いもしやすくなります。 しかし、不動産を換価分割によって相続する場合、注意しなければいけない点がいくつかあります。 今回はこちらの点について解説します。
換価分割に伴う相続登記について
不動産の換価分割を行うには、不動産を売却する必要がありますが、被相続人名義の不動産をそのまま売買することはできません。 そのため、売却を前提として、まずは不動産の名義を相続人に変更する相続登記の手続きが必要です。 また、換価分割の前に行う相続登記の方法には以下の2つのパターンがあり、どちらを選択するかは協議する必要があります。 ①複数の相続人の共有名義とする ②相続人の一人が代表相続人となる ①の場合、不動産の売却時に相続人全員が売買条件に合意したうえで契約書に署名、捺印しなければならないため、相続人の人数が多い場合には手続きに時間がかかることが考えられます。 ②の場合は、代表相続人だけが不動産の売却手続きを行うことになるため、手続き自体は簡素化できますが、すべてを一人に任せることになるため、よほど信頼できる相続人がいなければ難しいです。
換価分割で発生する税金について
不動産の換価分割では、主に以下の3つの税金が発生します。 ・登録免許税 ・収入印紙税 ・譲渡所得税 相続登記の登録免許税は、不動産の評価額×4/1,000で計算します。 そのため、おおむね数十万円になることが多いです。 例えば、評価額2,000万円の土地と評価額500万円の建物について、相続登記を申請する場合には、土地と建物の評価額を足した2,500万円×4/1,000で、10万円が登録免許税となります。 また、収入印紙税も数万円程度と、それほど大きな金額にはなりません。 数十万円など高額になるのは、売却する不動産の金額が1億円を超えるケースだけであり、50億円を超えるものについては、60万円の収入印紙税が課されますが、これほど高額な不動産を売却するケースは極めて少ないです。 しかし、譲渡所得税は、売却時に得た譲渡益が大きければ大きいほど金額が高くなり、換価分割によって分ける金額を大きく減らしてしまうおそれがあります。 譲渡所得税は、購入当時の金額から売った金額の譲渡益について課税がされます。 例えば、購入時1,500万円で買った不動産を、2,500万円で売って換価分割した場合には、譲渡益1,000万円に対して税金が課税される仕組みです。
換価分割が適しているケースについて
不動産の換価分割が適しているケースは、主に以下の通りです。 ・誰も現物の財産取得を望まない ・公平に財産を分けたい ・代償金を支払う資力がない ・維持管理をしたくない 相続人のうち、誰も現物の対象財産の取得を望まないなら換価分割を検討すべきでしょう。 物件を売却すれば、誰もその財産を取得、維持管理しなくて良いからです。 例えば、田舎に実家が残されていて、誰も所有したいと考えていない場合などには、売却して現金で分けるのが良いでしょう。 また、とにかく公平に相続を行いたい場合や、代償分割を行うための資金が用意できない場合などにも、換価分割は適しています。 逆に、相続人の中に一人でも現物の取得を望んでいる方がいる場合や、今後相続した不動産を何かしらの用途で使用する予定がある場合などは、換価分割が向いていないため、注意してください。 もちろん、一部の相続人の意見を無視して強制的に換価分割を行うと、大きなトラブルにつながります。
換価分割に伴う不動産売却時の売却価額について
不動産の換価分割をする際には、「納税資金を確保したい」や「早く相続手続きを完了させたい」などのように、売却活動を早く終えたがる方が多いです。 しかし、残念ながら不動産の場合、急いで売却しようとすると、相場よりも売却価額が低くなってしまうケースもあります。 不動産や株式の場合、相場の良し悪しや売れやすい時期にムラがあるので、相続人が売却したいタイミングと、相場における売り時が合致しない可能性も考えられます。
分割する金額に差が出てしまうケースについて
換価分割をする不動産が、居住用住宅(実家など)の場合で、かつ譲渡所得税が課されるケースでは、各相続人の手取り額に差が出てしまうケースがあります。 具体的には、亡くなった被相続人と同居していた相続人がいた場合、居住用財産の3,000万円特別控除の要件を満たせば、こちらの相続人だけが居住用財産の3,000万円特別控除の恩恵を受けることになり、その結果手取額に大きな差が生まれ、不公平感が生じる可能性があります。
まとめ
ここまで、不動産を換価分割によって相続する際の注意点について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか? 換価分割は、相続財産を均等に分けられる可能性が高いですが、売却の手間がかかったり、思ったよりも譲渡益を得られなかったりすることが考えられます。 そのため、他の分割方法と比較し、当該の相続にもっとも適しているものを選ぶことをおすすめします。