不動産を所有する方は、前もって遺言書を作成することで、相続人同士のトラブルを防止できます。 しかし、遺言書の書き方にはさまざまなポイントがあり、少しでも内容が不十分になると、逆に相続人を混乱させてしまいます。 今回は、不動産相続に関する遺言書作成のポイントについて解説します。
被相続人自身が作成するのは自筆証書遺言
不動産相続に関する遺言書にはいくつかの種類がありますが、被相続人自身で作成するものは自筆証書遺言と呼ばれるものです。 こちらは、被相続人の自筆によって残す遺言者のことで、紙とペンさえあればいつでも作成できる、もっとも手軽な種類です。 また、作成のルールはあるものの、いつでも書き直しが可能であり、費用もかからないため、不動産相続に関する遺言書を作成する際も、こちらが使用されるケースが多いです。
不動産相続に関する遺言書の記載内容
不動産相続に関する遺言書には、以下の内容を必ず記載しなければいけません。 ・土地に関すること ・建物に関すること ・区分所有に関すること ・共有持分に関すること
土地に関すること
遺言書には、土地に関する以下のデータを記載します。 ・所在地 ・地番 ・地目 ・地積 こちらの内容については、最新の登記簿謄本を取得し、その記載の通りに書くのがポイントです。 特に地番については、普段使用している住所表示とは異なるため、書き間違いに注意してください。
建物に関すること
不動産相続に関する遺言書には、建物に関する以下の情報も記載します。 ・所在地 ・家屋番号 ・居宅 ・構造 ・床面積 登記されていない建物の場合、役所で取得できる固定資産評価証明などを参考に、上記の内容を記載し、家屋番号については“未登記”とします。
区分所有に関すること
不動産相続を行うのがマンションである場合、被相続人は区分所有権と敷地権を保有しているため、遺言書には区分所有建物及び敷地権として、登記簿謄本の通り以下のように記載します。 ・一棟の建物についての表示は、所在、建物の名称、構造、土地の符号、地積 ・敷地権の目的たる土地の表示は、家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積 ・敷地権の表示は、土地の符号、敷地権の種類、敷地権の割合
共有持分に関すること
被相続人が所有している不動産に共有持分がある場合は、土地や建物の情報に加え、“持分の〇分の〇”という表記を忘れてはいけません。
不動産相続の遺言書作成における注意点
不動産相続の遺言書を作成する際には、以下の点に注意してください。 ・必要な内容が記載されていない ・作成のルールを守っていない ・不動産に関する情報が曖昧 ・加筆修正のルールを守っていない 意外と多いのが、日付の記載忘れです。 自筆証書遺言は、後の加筆修正などの可能性も考慮して、いつ作成されたものなのかが重要になるため、正確な日付が記載されていないものは無効になります。 また、文書ではなく映像で残しているなど、遺言書作成の基本的なルールを守っていない場合や、不動産に関する情報が不足していたり、曖昧になっていたりする場合も、遺言者が無効になることがあります。 その他、加筆修正についてですが、こちらは被相続人自身が訂正した上で、変更の場所を指示し、変更したことを付記します。 その上で、変更した場所に押印、署名しなければいけません。 単純に、ペンなどで二重線を引き、その上下に書き直した場合などは無効になるため、注意してください。
不動産相続に関する遺言書の例文
被相続人が土地を所有していて、そちらを特定の相続人に相続させたい場合の遺言書の例文は、以下の通りです。 遺言者〇〇〇〇は、本遺言書により次の通り遺言する。 第〇条 遺言者は、遺言者の有する下記の土地を、妻〇〇〇〇に相続させる。 記 所在 〇〇県○○市〇〇一丁目 地番 一番一 地目 宅地 地積 100平方メートル 令和〇年〇月〇日 〇〇県〇〇市〇〇一丁目〇番〇号 遺言者 〇〇〇〇 ㊞
第三者に相続したい場合のポイント
被相続人の中には、相続人ではなく、お世話になった第三者などに不動産を引き継ぎたいという方もいるかと思います。 このようなケースでは、遺言書に“相続する”ではなく、“遺贈する”と記載します。 また、遺贈する相手方は、住所や氏名で特定し、全財産を渡す場合は、遺留分に注意が必要です。 ちなみに、このようなケースでは、遺言書によって遺言執行者を指定しておくのがポイントです。 遺言執行者を指定しておけば、他の相続人の関与なく、遺言を執行することができます。 逆に、指定していなかった場合、他の相続人全員の署名捺印、印鑑証明書等が必要になります。
まとめ
ここまで、不動産相続に関する遺言書作成のポイントについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか? 冒頭でも触れた通り、遺言書は相続人の手続きをスムーズにするためのものですが、書き方に誤りや不備があると、相続人を混乱させたり、トラブルを招いたりする原因になります。 そのため、どのように記載すれば適切なものになるのかについては、十分理解した上で作成を進めていく必要があります。