不動産相続では、複数の相続人が関わったり、さまざまな分割方法が用いられたりします。 そのため、完了までの流れが複雑化することも多く、トラブルが起こるケースも珍しくありません。 ここからは、不動産相続における金銭関係のトラブルについて、対処法を解説したいと思います。
不動産相続における金銭関係のトラブル5選
不動産相続で起こり得る金銭関係のトラブルとしては、主に以下のようなことが挙げられます。 ・相続税を支払えない ・代償金が支払われない ・不動産の評価方法で揉める ・譲渡所得税の負担方法で揉める ・共有物件にかかる費用で揉める
相続税を支払えない
不動産相続における金銭関係のトラブルとしてよくあるのは、相続税を支払えないというトラブルです。 相続税の納税、申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内であり、期限内に納めないと延滞税や加算税の対象になるため、早急に対処しなければいけません。 また、相続税を支払えない場合の対処法としては、主に以下が挙げられます。 ・延納、物納制度の利用 ・相続不動産の売却 ・相続放棄 相続税は、現金一括で納めるのが原則ですが、一括払いが難しい場合には、延納や物納で対応できることがあります。 延納は、本来一括で納めなければいけない相続税を分割払いにできる制度で、物納は不動産など、一定の財産で代わりに納めることができる制度です。 ただし、これらの制度は要件を満たしていないと利用できないため、早めに確認しておきましょう。
代償金が支払われない
不動産相続を代償分割で行う場合、代償人となった相続人から、なかなか代償金が支払われないというトラブルが発生することがあります。 このような場合、代償人に支払いの可能性があるのであれば、家庭裁判所に遺産分割後の紛争調整調停を申し立てることができます。 こちらの調停で、当事者間に代償金の支払いについて合意が成立した場合は、調停が終了となりますが、その後もなお代償金の支払いがない場合は、調停調書にもとづいて直ちに強制執行することができます。 つまり、代償人の財産を差し押さえられるということです。 また、支払いの可能性がない場合は、通常の裁判をすることになります。 具体的には、代償金を支払わない代償人を被告とし、代償金支払請求訴訟を提起します。
不動産の評価方法で揉める
不動産相続を現物分割で行う場合、どのような評価方法を採用するのかがまとまらず、相続人同士でトラブルが発生することがあります。 不動産の評価方法には、実勢価格、地価公示価格、路線価、固定資産税評価額の4通りあり、評価方法によって評価額は変わってくるため、なかなか相続人全員の考えが合わないことがあります。 このようなケースでは、遺産分割調停を申し立て、調停でもなかなか話がまとまらない場合、不動産鑑定士に鑑定を依頼し、その評価額を採用するのが一般的です。
譲渡所得税の負担方法で揉める
不動産相続を換価分割で行う場合、不動産を売却することになりますが、こちらの売却に伴って譲渡所得税が発生した場合、その負担方法を巡ってトラブルになることがあります。 特に、遺産分割協議の時点で、譲渡所得税にまで考えが及んでいなかった場合、支払いで揉めやすくなることが多いです。 そのため、まずは遺産分割協議で譲渡所得税を算出し、その分を引いた額で分配するように取り決めるのが大切です。 また、売却益を分配する前の段階なのであれば、売却金で調整することもできます。 間違っても、特定の相続人に譲渡所得税の負担を押し付けるようなことはしないようにしましょう。
共有物件にかかる費用で揉める
不動産相続を共有分割で行う場合、その物件を維持するためにかかる費用について、トラブルが発生することがあります。 共有分割の場合、いわばその不動産の名義人は、相続人全員ということになり、維持費についても全員で負担しなければいけません。 例えば、共有する相続物件で雨漏りが発生し、修繕工事を行う場合、その費用は共有者が共有持分に応じて負担する必要があります。 しかし、場合によっては、特定の共有人にこちらの費用の支払いを拒否されることも考えられます。 このようなケースでは、共有者が1年以内に支払いに応じない場合、他の共有者が相当の償金を支払うことで、支払いのない共有者の持分を取得することができます。 つまり、費用を立て替えることで、修繕費用を支払わない共有者の持分を取得し、共有関係を解消できるということです。 もちろん、こちらは償金を支払う共有者の経済的な余裕が必要ですが、場合によっては使い勝手の良い物件になることも考えられます。
まとめ
ここまで、不動産相続における主な金銭関係のトラブルについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか? 不動産相続は、スムーズに進んだとしても手続きが非常に多く、心身ともに疲労の溜まるものです。 また、金銭関係のトラブルが発生すると、その負担はさらに大きくなるため、できる限りトラブルが起こらないように進めていくことが大切です。