不動産の代償分割は、1人の相続人が不動産をそのまま引き継ぎ、他の相続人に対して代償金を支払うというものですが、後々になって、不動産を引き継いだ相続人による代償金の支払いが難しくなるというケースがあります。 今回は、不動産相続において代償金が支払えない場合の対処法について解説します。
不動産相続における代償金の金額
不動産相続を代襲分割で行う場合に発生する代償金は、分割の対象となった財産の価額によって決まり、主に下記の2つの価額から選択することができます。 ・相続税評価額 ・代襲分割時点での取引価額 また、代償金の金額により、相続税額は変わってくるため、対象財産の価額をどちらにするかについては、相続人の間でよく話し合って決定することが大切です。
不動産相続の代償金が支払えない場合の対処法
不動産相続の代襲分割では、不動産を引き継いだ相続人が、代償金を支払えなくなることがあります。 こちらは、分割方法を決定した後、代償人に想定外の支出があったときなどに起こり得ます。 ただし、不動産相続の代償金が支払えない場合でも、以下のような方法で対処できる可能性があります。 ・分割払いにする ・他の資産を交付する ・不動産ローンを利用する ・他の分割方法を検討する ・土地の分筆を検討する
分割払いにする
不動産相続の代償金は、現金による一括払いが理想的ですが、支払い能力に不安があるときは、分割払いにしても問題はありません。 ただし、代償金を支払う人、もらう人双方の合意が必要なため、遺産分割協議書に分割払いすることを明記しておきましょう。 代償人だけの判断で、分割払いにすることはできません。
他の資産を交付する
先ほど、不動産相続の代償金は現金払いが理想的と言いましたが、代償金を支払う代わりに、現金以外の財産を交付するというのも一つの手です。 例えば、他の不動産や未公開株式などは、その価値が高額になるケースもあるため、代償金の代わりとして認められることも考えられます。 ただし、不動産や未公開株式などを代償金の代わりに交付する場合には、資産の評価方法が問題になります。 評価方法にはさまざまな考え方があり、相続人同士で揉めやすいポイントであるため、注意が必要です。 また、代償金として現金の代わりにほかの資産で支払った場合、譲渡所得税が課税される可能性があります。 譲渡所得金額は、“代償分割時の時価-(取得費用+譲渡費用)”で求められ、譲渡所得(利益)が発生した場合は譲渡所得税がかかります。 ちなみに、譲渡所得については、ほかの所得と合算しない分離課税制度が採用されている点も覚えておきましょう。
不動産ローンを利用する
不動産相続の代償金として支払う現金を用意するため選択肢には、不動産担保ローンを利用すると言うことも挙げられます。 不動産担保ローンとは、名前の通り不動産を担保にして行う借り入れのことをいいます。 無担保のローンと比較して、不動産担保ローンは低金利、審査に通りやすいなどのメリットがあります。 また、不動産ローンは、不動産を売却して現金化するのではなく、あくまでも金融機関からの融資です。 そのため、不動産を所有したまま、資金調達をすることが可能です。 ただし、不動産ローンにおける融資額は、担保として設定する不動産の価値によって左右されます。 相続した不動産の価値が低ければ、不動産ローンを申し込んでも、融資してもらえる金額はあまり大きくなりません。
他の分割方法を検討する
どうしても不動産相続の代償金が用意できないという場合は、換価分割など、他の分割方法の選択も検討しましょう。 換価分割とは、不動産などの財産を売却し、得られた売却金を法定相続人の間で分配する方法をいいます。 例えば、子ども3人が相続人となり、3000万円の不動産があった場合には、不動産を売却し、それぞれが1000万円ずつ受け取ります。 相続した不動産が残らなくても特に問題ないという場合は、こちらの方法に切り替えることをおすすめします。
土地の分筆を検討する
分筆とは、一つの土地に境界を設定して物理的に分ける方法です。 不動産相続の代償金が用意できない場合で、なおかつ現金の代わりになる土地が一筆しかなく、丸ごと手放すわけにはいかない事情があれば、分筆を検討しても良いでしょう。 ただし、こちらの方法では、分筆後の土地を代償金の額と同等にする必要があるため、土地家屋調査士へ支払う測量費や登記費用も発生します。 また、「誰がいくらを負担するか?」という問題も出てくるため、慎重な話し合いも必要です。 ちなみに、測量の際には隣地所有者の立ち合いも必要になるため、分筆完了までには数ヶ月かかるケースが一般的です。
まとめ
ここまで、不動産相続において、代償金が支払えない場合の対処法について解説しましたが、いかがでしたでしょうか? 経済的な余裕があまりない相続人が代償人になると、代償金が支払えなくなる可能性が高くなります。 そのため、代償人を含む相続人は、自分たちにとってもっとも適している分割方法は何なのかについて、徹底的に話し合った上で決定すべきです。