不動産を相続した方は、被相続人の遺した不動産を自身の所有物にするために、さまざまな手続きを行わなければいけません。 また、そのような手続きでもっとも重要なのが相続登記であり、こちらにはさまざまな方法があります。 今回は、不動産の相続登記の方法や必要な書類について解説したいと思います。
相続登記の概要
相続の発生に伴って、不動産の権利者(または権利の割合)が変わった場合に、その権利の変更を登記することを相続登記といいます。 相続登記をするには、法定相続分のままで登記する場合と、遺産分割協議で決定した内容に基づいて登記する場合があります。 また、有効な遺言書が存在すれば、遺言書に従って相続登記することになります。 また、法定相続分のままで相続登記をし、その後に遺産分割協議が成立した場合は、その協議の決定内容に基づいて再度、相続登記を申請します。
不動産の相続登記に必要な書類
先ほど触れたように、不動産の相続登記は、法定相続分のままで登記する場合と、遺産分割協議で決定した内容に基づいて登記する場合、そして遺言書に従って登記する場合があります。 また、どの方法で登記するかによって、必要な書類は微妙に変わってきます。 ここからは、それぞれの方法において必要な書類と、各書類の簡単な説明をしたいと思います。
法定相続分のまま登記する場合
法定相続分とは、不動産などの遺産相続にあたって複数の相続人がいる場合、誰がどの割合で遺産を相続するかを民法で定めたものです。 民法第900条では、同順位の相続人が数人あるとき、その相続分について、以下のように定めています。 ・子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は各1/2 ・配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は2/3、直系尊属の相続分は1/3 ・配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は3/4、兄弟姉妹の相続分は1/4 ・子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする(父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の1/2) また、法定相続分のまま不動産の相続登記を行う場合、以下のような書類が必要になります。 ・戸籍謄本 ・住民票 ・固定資産評価証明書 ・登記申請書 ・相続関係説明図 ちなみに、相続関係説明図とは、被相続人と法定相続人の関係を表した家系図のようなものであり、申請人が作成します。
遺産分割協議で決定した内容に基づいて相続する場合
遺産分割協議とは、不動産などの遺産を受け継ぐ人が複数以上いる場合に行われる協議で、誰がどの程度の遺産を引き継ぐのかなどを話し合いで決めることをいいます。 これにより、遺産相続のトラブルを防ぐことができ、全員が納得できるように話を進めることが可能です。 また、遺産分割協議で決定した内容に基づき、不動産の相続登記を進める場合は、以下の書類を用意する必要があります。 ・戸籍謄本 ・住民票 ・固定資産評価証明書 ・登記申請書 ・遺産分割協議書 ・印鑑証明書 ・相続関係説明図 ここで用意する遺産分割協議書は、必ず相続人全員の記名捺印(実印)が必要になります。
遺言書に従って相続する場合
被相続人が遺言書を遺している場合、原則としてその遺言書に記載された内容の通りに、不動産の相続登記を行います。 遺言書にはいくつかの種類があり、被相続人が自身で作成した自筆証書遺言の場合は、相続登記を申請する前に、家庭裁判所で検認という手続きをしなければいけません。 検認は、遺言書の内容を明らかにすることで、偽造や変造を防止するために行うものです。 ちなみに、遺言書が公正証書遺言の場合や、法務局における遺言保管制度を利用した自筆証書遺言の場合は、検認を行う必要がありません。 公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことをいいます。 公証役場で原本が保存されるため、紛失や偽造の心配がなく、トラブルを未然に防ぐことができます。 作成時は、被相続人が公証人2人以上と公証役場へ行き、必ず口頭で述べますが、事前に作成したものを読み上げても構いません。 なお、聴覚、言語機能障害者は手話通訳、筆談によって公正証書遺言をすることができます。 本人が公証役場に行けない場合は、病院または自宅へ公証人に出張してもらうことも可能です。 また、遺言書に従って不動産の相続登記をする場合は、以下の書類を用意します。 ・戸籍謄本 ・住民票 ・固定資産評価証明書 ・登記申請書 ・遺言書 遺言書に従って行う不動産の相続登記は、もっとも用意する書類が少ないです。 さらに、検認の必要もなければ、いたってスムーズに相続登記の手続きに移ることができます。
まとめ
ここまで、不動産の相続登記に必要な書類について、相続登記の方法別に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか? 2024年から、相続登記は、遺贈による不動産取得を知った日から3年以内に行わないと、10万円以下の過料の対象になります。 そのため、今後相続を行う可能性がある方は、ある程度相続登記の流れを掴んでおくことをおすすめします。