空き家対策の一つ“家族信託”のメリットについて

相続に関すること

現在日本では空き家が増え続けていて、この30年間で2倍以上に増加しています。 また、空き家を相続した相続人が、その処理や管理に困るというケースも多く見られます。 今回は、そのような空き家のトラブル対策の一つである“家族信託”の概要、メリットについて解説したいと思います。

家族信託の概要

家族信託とは、所有者である親が元気なうちに、信頼できる子どもや親族と契約を結び、親に代わって子どもなどが財産を管理できるようにする契約をいいます。 仕組みとしては、不動産などの所有権を財産権と名義に分け、名義のみを子どもなどに変えることで、不動産の管理処分などの権限だけを先に渡すことができるというものです。 名義を変更するものの、財産権は所有者である親に残るため、贈与税や不動産取得税などを課税されることなく利用できます。 また、不動産の管理を任せる側の人を委託者、任せられる側の人を受託者、不動産から利益を受ける人を受益者といいます。

空き家の家族信託におけるメリット

空き家対策の一環として、家族信託を行うことのメリットとしては、主に以下のことが挙げられます。 ・資産の凍結リスクを防ぐことができる ・贈与税がかからない ・先の代まで財産承継できる ・受託者は管理を放棄できない ・遺言書よりも自由度が高く効力もある

資産の凍結リスクを防ぐことができる

空き家の家族信託における最大のメリットとしては、やはり資産の凍結リスクを防ぐことができるという点が挙げられます。 例えば、父親が委託者となり、今後空き家になり得る不動産の管理や処分を受託者として長男に任せておけば、万が一父親が認知症などを患ったとしても、長男の判断で売却やリフォームなどを行うことができます。 また、売却代金で、親の施設への入居費用を捻出することも容易になります。

贈与税がかからない

今後空き家になる不動産において、家族信託の契約を自益信託にすると、贈与税が発生しないというメリットがあります。 自益信託とは、親を委託者および受益者、子を受託者、委託者の自宅を信託財産とする契約のことです。 簡単にいうと、財産を家族に託し、自身(親)のために管理処分してもらう契約です。 こちらの契約の場合、財産を預ける方と、財産の利益を得る方が同じであるため、贈与税の対象にはなりません。 ただし、委託者と受益者が異なる場合は、贈与税が発生するため、注意してください。

先の代まで財産承継できる

空き家となる物件で家族信託をすることにより、数世代先の財産承継まで指定できることも、遺言書にはない家族信託ならではのメリットです。 例えば、子がすでに自宅を所有しているなどの理由で、不動産を活用できない場合、承継先を孫などに指定することにより、空き家が放置されてしまうリスクは軽減します。

受託者は管理を放棄できない

家族信託の信託法では、受託者に課せられる義務として、忠実義務というものが定められています。 こちらは、受託者が受益者のために、忠実に信託財産を管理しなければいけないという決まりのことをいいます。 そのため、空き家の家族信託では、相続時の相続放棄とは違い、管理の放棄をすることが認められていません。 受託者は、委託者の財産の名義人として、物件の管理や運用、処分を行う義務があるため、適切な管理がされた状態の物件を残すことができます。

遺言書よりも自由度が高く効力もある

家族信託は、遺言書と同等の効力を持っています。 また、遺言書を作成するには、厳密に民法で定めた作成方法に従う必要がありますが、家族信託であれば、委託者と受託者の間で契約を結ぶだけで、遺言書と同様の効果を得ることができます。 その上、先ほども解説したように、家族信託では受託者を孫に指定するなどの自由度もあるため、非常に使いやすい制度だと言えます。

空き家の家族信託における注意点

収益物件を信託財産に入れた場合、こちらの信託不動産の年間収支上の赤字はなかったものとみなされます。 そのため、信託不動産に関する損失は、信託財産以外からの所得と損益通算して、課税対象の所得を減らすことができません。 また、空き家の所有者である親などの判断能力がなければ、家族信託を行うことはできませんし、仮に家族信託ができたとしても、受託者が信託財産を自分勝手に利用してしまう可能性があります。 受託者の行為を監督するのは受益者ですが、受益者が高齢で監督ができない場合などには、受託者の業務が適切に行われているか監視するため、受益者代理人、信託監督人を設定し、第三者の目を入れ、受託者の権限乱用を防止することが大切です。

まとめ

ここまで、空き家対策の一つである家族信託について解説しましたが、いかがでしたでしょうか? 家族信託は、親の生前から、今後空き家になる物件について、管理や維持がおろそかになることを防ぐための制度です。 親の健康状態が悪化すると、気付いた頃には実践できなくなっていることもあります。 そのため、実際に契約を結ぶためには、できる限り早めに準備を行わなければいけません。

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