不動産を相続する際、相続人が一人であれば、そのまま引き継ぐことができますが、このようなケースは稀です。 多くは複数の相続人で分割方法を決定し、必要な手続きを踏んで初めて相続をすることができます。 今回は、不動産相続を共有分割で行うことのメリット・デメリットについて解説したいと思います。
共有分割の概要
不動産相続における共有分割とは、相続物件を複数の相続人で共有する相続方法をいいます。 わかりやすくいうと、不動産を“分けない”方法であり、すべての相続人が共有者として、法定相続割合に応じた共有持分を取得し、そのままの状態で相続します。 現物分割と違うところは、相続人のうちいずれか一人が名義人になるのではなく、全員が名義人になるという点であり、稀ではありますが、現在も相続方法の一つとして用いられることがあります。
不動産相続を共有分割で行うことのメリット
不動産相続を共有分割で行うことのメリットとしては、主に以下のことが挙げられます。 ・公平感がある ・収益物件の場合は収入も平等に分けられる ・売却時の利益に対する税金の控除額が上がる
公平感がある
不動産相続を共有分割で行うことにより、相続人間の不公平感がなくなり、遺産分割をしやすくなります。 法定相続割合に基づいた遺産分割を行う場合、その財産の種類には関係なく、財産の金額が平等になるようにします。 このとき、現金や有価証券は分割しやすいですが、不動産は分割することができません。 ただし、共有分割であれば、不動産自体を分割することなく、平等に財産を分けることができます。
収益物件の場合は収入も平等に分けられる
被相続人の遺した物件が収益物件の場合、共有分割をすることで、そこから今後得られる収益も平等に分けることができます。 不動産の賃料収入は、原則的にはその不動産の所有者が持分に応じて取得することになるため、継続的に得られる収入についても、不公平感はありません。
売却時の利益に対する税金の控除額が上がる
不動産相続を共有分割で行い、その物件を売却することにより、税金の控除額が上がります。 こちらは、居住用財産の3,000万円特別控除により、譲渡所得にかかる税金の控除が二重で受けられることが理由です。 例えば、3,000万円の控除が受けられる場合に、2人の相続人で共有すると、控除額は6,000万円にまでアップします。
不動産相続を共有分割で行うことのデメリット
一方で、不動産相続を共有分割で行うことには、以下のようなデメリットもあります。 ・自由に売却することができない ・不動産の管理で揉めることがある ・権利関係のトラブルにつながる
自由に売却することができない
不動産相続を共有分割で行った場合、共有者のうちの一人が、自分だけの意思で不動産を売却することはできません。 売却するには、共有者全員からの合意を得る必要があります。 また、このような売却の決定については、共有持分が多い共有者ほど優遇されるということもありません。 例えば、Aさんが9割、Bさんが1割の共有持分を持っているとします。 こちらのケースでは、たとえ1割であろうと持分を所有しているBさんがいる以上、Aさんは不動産全体を売却するために、Bさんに対して合意を得る必要があります。 もちろん、一人でも共有者が売却に納得しない場合、手続きは難航します。
不動産の管理で揉めることがある
共有名義の不動産では、売却だけでなく、不動産の管理について、共有者同士でトラブルが発生することもあります。 共有物件が収入物件である場合、賃貸借契約の締結や更新をすることもありますが、こちらの契約期間が5年超の場合、共有者の過半数の同意がないと実行できません。 また、資産価値を高めるようなリノベーション工事についても、過半数の同意が必要になります。 共有物件の今後の使い方などについては、共有者によって考え方が違うことがあり、そのような場合は上記のような賃貸借契約、リノベーション工事に納得しない人物が現れる可能性が高く、賛成派と反対派との間で対立が起こります。
権利関係のトラブルにつながる
不動産相続を共有分割で行うと、権利関係をめぐって相続人同士でトラブルになることもあります。 例えば、過半数の持分を持たない共有者の一人が、独占的にその不動産を使用しているような場合、他の共有者は、少数持分の占有者も共有持分に応じた使用収益権を有するため、共有物の全部の返還を命ずることはできません。 また、現実的に考えると、複数の共有者が一つの不動産をバランス良く使用するのは難しく、使用する予定があるのであれば、あらかじめ現物分割や代襲分割により、特定の名義人を決定する方が賢明だと言えます。
まとめ
ここまで、不動産相続を共有分割で行うことのメリット・デメリットについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか? 共有分割は、決してメリットのない方法ではないものの、相続後に発生するトラブルのことを考えると、それを補填するほどのメリットがあるとは言えません。 そのため、できる限り他の相続方法を選択することをおすすめします。