親が高齢者施設に入所し、その後家が空き家になってしまうというケースがあります。 このような場合、子は親の空き家を売却すべきなのでしょうか? また、もし売却するのであれば、どのようなことに注意すべきなのでしょうか? 詳しく解説しますので、今後このようなケースに遭遇する可能性がある方は参考にしてください。
空き家を売却すべきなのは親の高齢者施設への入所が決まったタイミング
親が高齢者施設に入所してから空き家を売却するのは、あまりおすすめできません。 どちらかと言うと、親の高齢者施設への入所が“決まった”段階で売却し、その後に入所するという流れの方が望ましいです。 つまり、完全に空き家になる前に売却しなければいけないということです。 なぜかと言うと、高齢者施設への入所後に売却する場合、空き家と判断されてしまうことで、譲渡所得の控除などが受けにくくなるからです。 家の売却で利益が発生しても、3,000万円特別控除という優遇制度があるため、所得税や住民税は課税されないケースがほとんどです。 しかし、居住しなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却しない場合、こちらの特例を使うことはできません。 特例が利用できない場合、所得税や住民税の税率は所有期間が5年以内の場合約39%、5年超でも約20%と高額になります。 とはいえ、入居が決まったタイミングでの売却にも、注意点もあります。 では次は、どのような注意点があるのかを見ていきましょう。
親の高齢者施設への入所が決まったタイミングで家を売却する場合の注意点
親が利用しなくなった空き家を子が売却する場合、必ずその空き家の所有者に許可を得なければいけません。 この場合、空き家の所有者は親だと考えるのが自然ですが、必ずしもそうとは限らないため、注意しましょう。 例えば、父親がすでに亡くなっており、母親が1人で生活している空き家などは、所有者が父親の名義になっている可能性があります。 この場合、父親に売却の許可を得ることはできないため、空き家の所有者を母親に変更し、その後母親に許可を取らなければいけません。
成年後見人制度を利用しなければいけないケースも
親の高齢者施設への入所が決まったタイミングで空き家を売却する場合は、親(所有者)の許可を取らなければいけないという話をしました。 ただし、場合によっては、認知症などが原因で親に意思決定能力がないこともあります。 親に意思決定能力がない場合、空き家売却の許可を得ることは困難であるため、子は成年後見人制度を利用することになります。 成年後見人制度とは、意思決定能力がない親の代わりに、後見人となる人物が法律行為を行うことができる制度です。 子が後見人を務めることもできますが、近年は弁護士や司法書士など、法律の専門家が後見人を務めることも多くなっています。 ちなみに、たとえ血の繋がった子であっても、以下に該当している方は後見人を務めることができませんので、注意してください。 ・未成年 ・過去に後見人を含む法定代理人を解任されたことがある方 ・破産者で復権していない方 ・被後見人に訴訟を起こした方とその配偶者および直系血族 ・行方不明者 など 復権とは、破産宣告を受けて破産者に課された権利の制限を消滅させ、破産者の本来の法的地位を回復されることをいいます。 例えば、破産者は免責許可の決定が確定したときなどに復権します。 また、直系血族とは、父母や祖父母、子、孫などを指しています。
子が複数いる場合は特に早めに売却しよう
親が高齢者施設に入所したタイミングで空き家を売却するべきはない理由は、前述した内容以外にもあります。 それは、子が複数いる場合に、トラブルが発生しやすくなるという理由です。 親の高齢者施設への入所が決まったタイミングであれば、まだ親から直接空き家の売却、売却益の分配について指示がもらえる可能性があります。 しかし、入所してしまうと、能力的にも物理的にも、親から適切な指示を受けるのが難しくなります。 また、子が複数いる場合、親の空き家を売却するには子全員が納得しなければいけないため、収拾がつかなくなることも考えられます。 つまり、子が複数いる場合は、親が高齢者施設に入所する前に子同士の意見をまとめ、早めに空き家の処理に関する指示を仰ぐべきだということです。 ただし、親の高齢者施設への入所が決まったタイミングで、すでに認知症の症状が出ている場合などは、結局話がまとまりません。 そのため、子が複数いる場合は、親の意思決定能力がしっかりしているうちに、高齢者施設への入所、空き家の売却について子全員を交えて話し合いをしておくべきです。
まとめ
ここまで、親の高齢者施設入所と空き家の売却について解説しましたが、いかがでしたでしょうか? 親が高齢者施設に入所した後から、空き家の売却のために動いていたのでは遅いです。 子は入所が決まったタイミング、もしくは親が高齢になったタイミングで、いつでも空き家の売却ができるように準備しておかなければいけません。 その方が税制面でも楽になりますし、子同士で空き家の売却について揉める可能性も低くなります。