不動産相続は、簡単にいうと不動産を遺した被相続人から、相続人に対して不動産が引き継がれるというものです。 しかし、実際の仕組みはもっと複雑であり、その複雑さから勘違いが発生することも多々あります。 ここからは、不動産相続にありがちな勘違いについて解説したいと思います。
不動産相続にありがちな勘違い7選
不動産相続に初めて携わる方の中には、以下のような勘違いをしている方が多く見られるため、注意が必要です。 ・パートナーは必ず相続人になれる ・法定相続分はすべて決まっている ・相続手続きは3ヶ月以内にしなければいけない ・相続放棄は生前にできる ・不動産のみの相続放棄ができる ・相続した不動産はそのまま売却できる ・相続税を支払うのは現金を相続した相続人
パートナーは必ず相続人になれる
民法では、亡くなった被相続人の配偶者(夫または妻)は、常に相続人になると定められています。 ただし、こちらはあくまで正式な婚姻関係にある配偶者のみを指しています。 そのため、事実婚のパートナーや、内縁関係の夫や妻といった方は相続人にはなれません。 このような関係性のパートナーがいるという方は、注意は必要です。
法定相続分はすべて決まっている
不動産相続において、相続人の法定相続分はすべて決まっていると思っている方もいるかと思いますが、こちらは勘違いです。 正確には、法定相続分は決まっているものの、どのような相続内容で相続するかは自由です。 例えば、父が死亡し、母、長男、次男の3人に相続が発生する場合、法定相続分は母が2/4、長男と次男が1/4ずつになります。 しかし、必ずしもこのような割合にする必要はなく、例えば“不動産については母がすべて相続し、預貯金は長男、次男が1/2ずつ相続する”という内容でも構いません。
相続手続きは3ヶ月以内にしなければいけない
不動産を含む相続手続きについて、相続発生から3ヶ月以内にしなければいけないと考えている方もいますが、こちらも勘違いです。 相続開始から3ヶ月以内と定められているのは、相続放棄の申告のみです。 そもそも、相続関係の手続きに期限が定められているものは少なく、相続放棄以外では相続税の申告(10ヶ月)、準確定申告(4ヶ月)、遺留分侵害額請求(1年または10年)のみです。
相続放棄は生前にできる
不動産を含む被相続人の財産を受け取らない相続放棄は、生前にもできると考えている方がいますが、こちらも勘違いです。 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内にしなければいけないと定められているため、相続の発生前に行うことは一切できません。 そのため、例えば「将来父が亡くなったとき、一切の相続を放棄する」と父の生前に宣言していたとしても、法的には何の効力もありません。
不動産のみの相続放棄ができる
不動産を相続する相続人の方の中には、数ある被相続人の財産の中から、不動産のみ相続放棄をすることができると考えている方もいるかもしれません。 つまり、預貯金などは相続し、不要な土地や家屋のみを相続放棄するということです。 しかし、このような放棄の仕方は、残念ながら認められていません。 相続放棄は、被相続人における預貯金、不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産についても、すべて相続しないという選択肢です。 そのため、不要な不動産を相続放棄したいのであれば、預貯金など他の財産の相続も放棄することになります。
相続した不動産はそのまま売却できる
被相続人から引き継いだ不動産は、被相続人が死亡した時点で、相続人が好きに手続きできると思われがちですが、実際はそうではありません。 被相続人が死亡した直後、残された不動産の名義は被相続人のままになっています。 こちらは、事前に相続人が相続登記をしておかなければ、相続人がその不動産の所有者であることを売買の関係者に主張できません。 また、相続した不動産を売却するということは、所有権が被相続人⇒相続人⇒買主と移ることになります。 そのため、たとえ相続人が不動産を利用することなく売却する場合でも、登記は実態に即した形にする必要があるため、やはり相続登記をしなければいけません。
相続税を支払うのは現金を相続した相続人
相続税を支払うのは、被相続人から現金(預貯金)を相続した相続人だけだと思っている方もいるかと思いますが、こちらは大きな勘違いです。 相続税を支払うのは、被相続人から1円でも財産を相続する相続人です。 ここでいう“1円でも”というのは、現金だけに限定されておらず、不動産や車、上場株式など、何かしらの財産を取得したときは、相続税の支払いが発生します。
まとめ
ここまで、不動産相続にありがちな勘違いについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか? 前述したような勘違いは、自身も含む誰かの権利を不当に奪ってしまうことや、後々のトラブルにつながる可能性があります。 そのため、今後相続に関わる可能性がある方は、実際に相続が発生する前に、ある程度の知識を有しておくべきだと言えます。