不動産相続は、財産を遺す側、引き継ぐ側の方だけでなく、さまざまな人物が関わるものです。 そのため、今後関わる可能性がある方は、自身がどれに該当するのか、また関わる人物の名称やその意味について理解しておかなければいけません。 今回は、主な不動産相続の登場人物について解説したいと思います。
不動産相続に登場する人物の名称とそれぞれの意味
不動産相続には、主に以下のような人物が登場します。 ・被相続人 ・法定相続人 ・遺言執行者 ・受遺者 ・代襲相続人 ・推定相続人 ・司法書士 ・税理士
被相続人
被相続人は、相続をする人、つまり亡くなった人のことで、不動産などの相続財産を所有していた遺産の元の所有者です。 不動産をはじめとする相続は、民法第882条で“死亡によって開始する”と定義され、医師等の診断書に記載された死亡日時より開始します。 また、特別なケースとしては、失踪宣告と認定死亡があります。 失踪宣告は、人の生死不明の状態が一定期間以上継続したときなどに、利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪宣告を行ない、死亡として扱わるものです。 認定死亡は、水害や火災などの被害で、死亡した事実が確実とされ、死体が未確認であっても、その取り調べをした官公署が市区町村へ報告し、戸籍に死亡を記載することです。
法定相続人
法定相続人とは、亡くなった人の遺産を受け継ぐ資格がある親族のうち、叔父や叔母、従兄弟以外の民法によって定められた相続人のことをいいます。 また、法定相続人には順位があり、その順位によって相続割合が変わります。 相続順位第1位は、被相続人の子どもや養子、孫、ひ孫、第2位は父母、第3位は兄弟姉妹とその子どもになり、被相続人の配偶者は常に法定相続人になります。
遺言執行者
遺言執行者は、不動産相続などにおいて、遺言内容を実現する役割を負う人物です。 遺言者が遺言で指示したことが実現するように、財産目録の作成や預貯金の払い戻し、相続人への分配などを行います。 不動産に関しては、名義変更や寄付などを行う権限を持っていて、こちらには弁護士や司法書士などの第三者が選任されるケースも多いです。
受遺者
受遺者は、遺言によって不動産などの財産を相続する人物です。 一般的には、財産の遺贈を受ける人物が、法定相続人以外の場合に使われる言葉です。 また、財産の種類を具体的に特定し、譲り受ける人物のことを特定受遺者といい、特定受遺者はいつでも放棄することができます。 逆に、財産を特定せず、プラスの財産もマイナスの財産も含めて包括的に遺産を譲り受ける人物は、包括受遺者といいます。
代襲相続人
代襲相続人は、代襲相続が起こったときに、本来の代わりに相続人になった人のことをいいます。 代襲相続とは、本来相続人となる人が、被相続人が亡くなるよりも前に死亡していた場合や、何らかの理由により相続権を失っている場合に、その人の子が代わりに被相続人の財産を相続することをいいます。 近年、高齢化が進むにつれ、親より先に子どもが亡くなることは珍しくありません。 このような場合、代襲相続が発生し、既に他界している人の子が代襲相続人となります。 例えば、父が亡くなった場合、通常相続人は妻と子となりますが、子が既に他界しており、その子に子(孫)がいれば、その子(孫)が代襲相続人です。
推定相続人
推定相続人は、今現在の状況で相続が発生した場合、不動産などの財産を相続するはずの人物です。 例えば、男性Aさんに妻Bさん、子どもCさん、Dさんがいる場合、Aさんの財産はBさん、Cさん、Dさんが相続することになり、これらの方はすべて推定相続人に該当します。 ただし、Aさんより先にBさん、Cさん、Dさんのうちの誰かが亡くなった場合、当然その方はAさんの財産を相続できませんし、Aさんの死亡までにAさんとBさんが離婚すれば、Bさんは相続から外れます。 このように、まだ相続が確定していないものの、相続するはずの人物であることから、推定相続人と呼ばれています。
司法書士
司法書士は、司法や法律に関する業務で、書類作成や手続き代行などを行う職業です。 不動産相続においては、主に以下のような業務を担当します。 ・相続人調査 ・相続財産調査 ・不動産登記手続き ・遺言に関する手続き ・生前対策(家族信託など) 一方で、相続税の申告などの税務関係業務については、税理士の業務範囲になるため、司法書士が対応することはできません。
税理士
税理士は、税務に関する専門家であり、不動産相続においては、主に相続申告業務に対応してくれます。 具体的には、相続税の計算や申告、税務調査対応などを行えます。 なお、税理士は税金に関する専門家であるため、相続税申告以外の申告業務を依頼することも可能です。
まとめ
ここまで、不動産相続に登場する主な人物の名称や意味について解説しましたが、いかがでしたでしょうか? 不動産をはじめとする相続は、ある日突然開始することも珍しくありません。 そのため、実際発生してからではなく、事前に相続に関する知識をある程度頭に入れておき、いざというときにスムーズに動けるように準備しておくべきです。