不動産相続で触れる機会のある難しい用語について

相続に関すること

不動産相続は、人生でそう何度も経験するものではありません。 そのため、相続人にとっては、ほとんどの関連手続きが初めてのことであり、そのプロセスにおいては、聞いたことのない用語に触れる機会も多いです。 今回は、不動産相続で触れる難しい用語の意味について解説したいと思います。

特別の寄与

最初に解説するのは、特別の寄与という制度です。 こちらは、相続人以外の被相続人の親族が被相続人の療養看護等を行なった場合には、一定の要件のもとで相続人に対して金銭を請求することができる制度をいいます。 2019年7月1日から施行されている制度で、請求できる者を特別寄与者、支払われる金銭を特別寄与料といいます。 また、特別の寄与は、無償で療養看護等を行ない被相続人の財産(不動産を含む)の維持、増加について特に寄与した場合とされ、特別寄与料の支払いについて当事者間の協議が整わない場合には、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができます。

相続土地国庫帰属制度

不動産相続で触れる難しい用語としては、相続土地国庫帰属制度も挙げられます。 こちらは、相続または遺贈によって土地の所有権または共有持分を取得した者等が、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度です。 所有者不明土地の発生を抑制するための制度で、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律に基づいています。 国庫へ帰属させるためには、申請によって法務大臣の承認を得る必要があります。 申請できるのは、相続または相続人に対する遺贈により土地の所有権または共有持分を取得した者で、共有土地については共有者の全員が共同して申請しなければいけません。 また、国庫への帰属を申請する土地は、建物が存在する土地、担保権または使用収益を目的とする権利が設定されている土地、境界が明らかでない土地などであってはならず、崖があって管理に過分の費用、労力を要する土地、通常の管理処分を阻害する工作物等がある土地など一定の土地については、帰属を承認されないことになっています。 ちなみに、承認を受けた者は、10年分の土地管理費相当額(土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した額)の負担金を納付しなければいけません。

相続税納税猶予制度

相続税納税猶予制度は、農業相続人の方が不動産相続で目にする機会のある用語です。 こちらは、農業相続人が農地等を相続した場合の相続税納税猶予制度です。 相続税納税のために農地を手放したり、細分化したりすることを防ぐ目的があります。 納税猶予が受けられるのは、農業委員会が証明した被相続人(死亡の日まで農業経営をしていた人または農地等の生前一括贈与をした人)の相続人で、農業の継続が条件となります。 また、猶予が適用されると、20年間は農地価格のうち農業投資価格を超えた部分に対する相続税は猶予され、納税猶予期限(20年または相続人が死亡、または生前一括贈与をした日)まで猶予された相続税は、原則として免除されます。

相続欠格

相続欠格とは、法律上不動産などの相続権を有するものが、相続に関し不正な利益を得ようとして、不正行為をし、またはしようとして、法律上当然に相続人の資格を失うことをいいます。 欠格者としては、故意に被相続人または先順位相続人を殺害し、または殺害しようとして刑に処された者や、遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した者などが定められています。 生前の被相続人との関係がよっぽど悪くない限り、相続人の方が不動産相続でこちらの用語に触れる可能性は低いですが、覚えておいて損はありません。 ちなみに、上記のような欠格者は、被相続人の意思に基づき、その者の相続権を失わせる相続廃除の対象になることがあります。

遺留分侵害額請求

遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が、侵害された遺留分を金銭で取り戻す手続きのことをいいます。 遺留分減殺請求とも呼ばれます。 相続人の遺留分侵害額請求の手続きは、相手方に内容証明郵便等で侵害された遺留分を請求する旨の意思表示をします。 また、遺留分侵害額請求の消滅時効は、相続の開始と遺留分侵害の事実を知ったときから1年です。 事実を知らなくても、相続の開始から10年で消滅時効となります。 遺留分侵害額請求がなければ、遺留分侵害の遺言も無効とはなりません。 ちなみに、遺言者としては、遺留分侵害額請求などのトラブルが発生しないよう、遺言時には遺留分侵害について注意をしなくてはなりません。 なお、令和元年6月30日以前は、遺留分減殺請求として、侵害された遺留分を相続財産そのもので取り戻す手続きを行っていました。

まとめ

ここまで、不動産相続で触れる機会のある難しい用語をいくつか見てきましたが、いかがでしたでしょうか? 不動産相続は、ある日突然発生することもあるため、手続きが慌ただしくなってしまうのはある程度仕方ありません。 しかし、わからない用語だらけだと、さらに手続きは進まなくなってしまうため、少しでも多く用語の意味を理解しておくのは大切だと言えます。

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