不動産相続時、相続人の行方がわからない場合の対処法

相続に関すること

不動産を含む被相続人の財産を相続する場合、遺言書が存在しない限り、相続人全員で遺産分割協議を行わなければいけません。 一人でも相続人が欠けていれば、その協議は無効になります。 では、不動産相続時、特定の相続人の行方がわからない場合は、どのように対処すれば良いのでしょうか?

まずは住所を特定する

不動産相続時、特定の相続人の行方がわからない場合は、まず住所を特定します。 方法としては、相続人の戸籍謄本を使用する方法が一般的です。 具体的には、行方がわからなくなっている相続人の現在の戸籍について、戸籍の附票を請求し、現在の住所を確認します。 長年連絡を取っていない相続人の場合、電話などで連絡をし、応答がないことも考えられます。 しかし、このような場合であっても、その相続人が生きている限り、相続人としての権利が消滅することはありません。 そのため、たとえ応答がなかったとしても、簡単な連絡で終わらせることのないようにしましょう。

住所が判明したら書面で連絡をする

不動産相続時、行方がわからなくなっている相続人の住所が判明したら、次は書面で連絡を試みます。 書面の内容は、相続が発生したこと、遺産分割協議をするために、相続人同士で集まる必要があることなどです。 また、書面を送付する際には、相手が急な連絡でも不快にならず、理解しやすい内容にすることが大切です。 書面ですべて伝えるのが難しい場合は、代表者の電話番号を記載しておき、そちらに電話をしてもらうように促すのもおすすめです。 ちなみに、特定の相続人のみ行方がわからなくなっている場合、連絡が取れる相続人のみで先に協議を完了させ、後々その承諾を得るために書面を送付する方がいますが、こちらはおすすめできません。 このように対処すると、自分がいないところで協議を進められた相続人の気分を害し、今後の相続がスムーズに進まない可能性があります。

住所や所在が判明しない場合

不動産相続時、行方がわからなくなっている相続人の住所を調べたものの、正確な住所が判明しなかった場合や、すでに判明した住所に住んでいなかった場合などには、行方がわからなくなっている相続人の財産管理人を選任します。 こちらは、生きている可能性が高いものの、所在がわからない場合、行方不明になってから7年未満の場合に、相続人などの利害関係者が、行方がわからなくなっている相続人の最後の住所地、または居住地を管轄する家庭裁判所に対し、財産管理人の選任を請求するというものです。 財産管理人は、家庭裁判所が書類をチェックし、利害関係を考慮した上で選出します。 一般的には、弁護士や司法書士などの専門家を候補者にすることが多いです。 ちなみに、こちらの制度によって選出された財産管理人は、家庭裁判所に権限外行為の許可を申請し、認められることにより、遺産分割協議に参加することができます。 もちろん、こちらの協議は、行方がわからなくなっている相続人が参加したのと同じ扱いになります。

失踪宣告について

失踪宣告とは、不動産相続時などに行方がわからなくなった相続人について、死亡したものとみなす制度です。 具体的には、行方不明者の生死が7年間明らかでない場合、普通失踪が認められます。 こちらは事情を問わず、利害関係者が家庭裁判所に失踪宣告を申し立てし、生死が不明になってから7年が経過したときより、普通失踪として扱われます。 つまり、行方がわからなくなっている相続人の住所も所在もわからず、なおかつその期間が7年以上に上る場合に、利用する制度だということです。 また、失踪宣告が成立した後は、死亡したという扱いになった相続人を除いた残りの相続人で、遺産分割協議を進めることができます。

不動産相続時に困らないための対策

不動産相続時、特定の相続人の行方がわからなくなると、残りの相続人はなかなか手続きを進めることができません。 もちろん、行方不明者を探すための時間や手間もかかります。 そのため、相続人側は、被相続人が亡くなる前に、どのような人物が相続人にあたるのかを把握し、所在を確認しておくことをおすすめします。 また、相続が発生する前から、長年行方がわからなくなっている相続人がいるのであれば、被相続人に遺言書の作成を依頼すべきです。 遺言書が存在する場合は、最低限の相続分である遺留分を除き、遺言書で指示された内容が優先されます。 遺言書の内容にしたがって遺産分割が行われるため、遺産分割協議を行う必要がなく、行方がわからなくなっている相続人の住所調査や、財産管理人の選任、失踪宣告などの面倒な手続きも必要ありません。

まとめ

ここまで、不動産相続時、相続人の行方がわからない場合の対処法について解説しましたが、いかがでしたでしょうか? 特定の相続人と連絡が取れず、なかなか不動産相続が進まないというケースは、決して珍しいことではありません。 そのため、今後相続をする可能性が高い方は、トラブルに巻き込まれないためにも、早めに対策を取っておくべきだと言えます。

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